あらすじ

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 藤名は楽をしようと文芸部に入り、薄葉と不動堂に知り合う。  薄葉の作品の語彙の豊富さに驚かされながらも、適当にやり過ごしていく藤名。  ある日、校舎に現れた怪異に巻き込まれた藤名たちはそれがふたりの生徒のせいだと暴き、その過程で藤名も生徒と同じ『幻訳』の力を得る。生徒が持っていた幻訳箇所を手に入れる。  不動堂は人間ではなく幻訳の力が集まった生命であり薄葉に世話になっているのだという。幻訳家たちはこの世のさまざまな概念、事物を訳しつつあり、やがて世界は苦しみのない理想郷へと翻るのだと教えられる。  幻訳家たちは魔法めいた力を持ち彼らによる犯罪が増えた。バベルなる組織が手引きしているらしい。  藤名が友人との一件で最後の大きなピースである友情の概念を訳したことにより世界は翻る。  訪れた理想郷では苦しみも悲しみも不幸も――楽しさも喜びも幸福さえもなく人びとがただ生きているだけになっていた。  理想郷とは真実、幻訳生命にとって居心地のよい世界であり、幻訳家たちは利用されていたのだ。  幻訳箇所をすべて集めれば自分好みに世界を変えられるとの情報が広がり戦いは激しさを増した。  そんなおり、薄葉と会話が成り立たなくなってきていた。こちらの言っていることが理解できないようで首を傾げることが増えたのだ。語彙が減ったのだと不動堂はいう。  薄葉は最初に不動堂から語彙を増やされて小説を書いていた。薄葉は藤名が幻訳の力を使うと自身の語彙が減ると知っていた。幻訳家は資料と対であり、薄葉は資料として存在していた。  思考力が極端に落ちた薄葉を救うべく世界をふたたび幻訳しようとバベルのトップを対峙する。  バベル総帥の糸杉は小説家だった。娯楽の必要のない世界を変え、さらに自分を求めるように元よりひどい、不幸が溢れた世界にしようとする糸杉を倒し、藤名が望んだのは幻訳のない世界だった。  藤名は楽できない世界に辟易しながら、ふたたび物語を紡ぎはじめる薄葉を見守るのだった。
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