言葉を編む ひつじ

3/24
768人が本棚に入れています
本棚に追加
/504ページ
今更、郁の言動の唐突さに文句を言っても仕方がない。 理解はしているが、心が着いてこない。 心の準備をする時間もないし、服装とか、手土産とか、いろいろ考えなくてはいけないことも、準備をしなくていけないことも、このままではすべてが吹っ飛ぶ。 「手土産は」 「いらないけど、モモが気にするなら、美味しいケーキを買っていこう。父が好きなお店があるから」 珍しく、郁からまともな言葉が返ってきた。 私は一つ解決したことに胸を撫で下ろしたが、首を横に振った。 「どんな服を着て行けば……」 「それもいつも通りでいいよ。どんな格好でも、モモは可愛いから」 郁の言葉は上滑りしていく。
/504ページ

最初のコメントを投稿しよう!