呪縛

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「気がつくと、息子と同い歳くらいの男の子が、じっとこっちを見ているんです。その子が来ている服が、私が捨てた兄の服なんです」  アメリカで捨てたはずの服を着た子が、日本の公園に? 見間違いじゃないのかと問うと、M子さんはスマホを取り出して私に差し出した。 「この写真を見て下さい」  スマホには、公園で撮影したと思われる画像が何枚も並んでいる。 「ほら、ここ、分かりますか? こっちは、この木の陰です。いるでしょ? こっちを見て。分かりますよね?」  拡大して見せてくれた画像には、確かに小さな子供が写ってはいるように見えなくもないが、ぼやけていてよく分からなかった。 「これ兄です。兄なんです」  画像を指差して、M子さんはうわごとのように繰り返す。 「兄が、私の子に乗り移ろうとやってきたんです。母が送りこんできたんです。助けて下さい。私、どうしたらいいんでしょうか」  人々が体験した怪異を文字にしてきている私だが、特別な霊能力があるワケではない。  M子さんが見たと言う子どもが、果たして、母親が導いた亡くなった兄の霊なのか、それとも母親に対する後悔の気持ちが見せた幻影なのか、正直私には分からなかった。  除霊師に詳しい友人を紹介するという約束をして、その日はMさんと別れたが、その後彼女からの連絡はない。
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