第三話

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幼い頃から「海軍兵学校(海兵)」のある「江田島」へ行って「海軍士官」になって「専修搭乗員(飛行機乗り)」になるのが夢だった。 周囲が勧める廣島一中を受験せず、昔から海兵とつながりのある私立の中学に進学したのも、すべて夢を現実にするためだ。 念願かなって海兵に合格し、親元を離れて江田島へ移ってからは、とにかく自分のことだけで精一杯だった。 海のそばで育ったため遠泳は得意だったが、そんなわしでも演習では何度も命を落としかけた。 今でこそ無二の親友となったが、海兵の同期として出会った神谷とは全く反りが合わなかった。 意気投合するようになったのは、海兵を卒業後、見習士官から正式な少尉となり、夢が叶って爆撃機の専修搭乗員(パイロット)として、地方の航空基地へ一緒に配属されるようになってからだ。 いつも冗談を云っている軽くていい加減な奴で、軍人には向かぬとばかり思っていたが、ちゃんとつき合ってみると情に厚い、なかなか骨のある男だった。
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