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(どうして……私はレイが好きなのに……。なのになぜ、こんなに心が痛むの? なぜ、私を抱くこの人のことを、愛しいと感じてしまうの……)
心と体が繋がらず、一花は軽く混乱した。
自分の心はレイを求めているのに、ジェラルドの求愛に動揺する自分が、彼女は信じられなかった。
気が付くと、勝手に腕が動き、自分を抱くジェラルドの手を握り締めていた。
再び彼女の中で、誰かの声が響く。
―― 愛してるわ……。愛してるわ、あなた……。
(どうして? 違う、私が愛しているのはレイよ。あなたは誰なの。私の中で何をしているの?)
自分の中の正体の見えない相手に、一花は必死に問い掛けた。
(お願い。私を自由にして。私はここにいたくない。帰らなくちゃ……レイが待ってる……)
だが、声はどんどん大きさを増していく。
―― 私はあの人を愛しているの。あの人には私が必要なのよ。お願い、今だけ、今だけ私を助けて……。あなたの体を、私に貸して……。
(嫌よ。私の体も心も私のものよ。誰にも渡さない。私は、……私よ)
一瞬意識を失いかけた一花は、しかし、強い意志でセシリアの魂を封じ込め、それに成功すると同時に、自分に掛かっていたジェラルドの術も解いた。
大きな力が覚醒するのを感じ、ジェラルドはハッと顔を上げた。
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