「申し訳ございません」

6/74
844人が本棚に入れています
本棚に追加
/355ページ
私は、あんなにお世話になって心から大切だと思っていた玲子お母さんのお葬式に出ることができなかった。 そんな自分が弱くて、情けなくて、部屋に閉じ籠って一人で泣いた。 鞠枝さんだって…… 出産で延期になってしまったけれど、結婚式は最初身内だけで挙式をあげて、後で親しい人だけ呼んでパーティーをすると言っていた。 身内の馨さんに会うことのできない私を気づかってくれたのは分かっていた。 この前鞠枝さんと話した時は「もう4年も経ってる」と言ったけど、この一年だけでもこんな状態だったから、エリア会議のことをとても心配してくれているのは聞かなくても分かってしまった。 「どうしたら新しい恋が出来るんですか?……私、もう恋がどんな気持ちだったかも分からないんです。思い出せないんです」 そう私は言った。それが正直な気持ちだった。 だから『好きだ』とも言って来ない、相澤との関係を断ち切ることも、受け入れることもできずにもて余している。 そんな私に鞠枝さんはこう言った。 「心のままでいいの。難しく考えることはないのよ。初花ちゃんが新しい恋に踏み出せるタイミングは、きっと来るよ」
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!