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ダークグレーのカーテンが、一度大きく膨らんだ。
カーテンの裾から入り込んだ日差しにかざされ、尚の黒髪に付いた滴がきらきら光る。
唇が離れたあと、おでこをつけたまま尚がぼそりと呟く。
「あんまそんな格好でふらふらすんなよ」
尚がシャワーに入っている間にコンビニに行っていた私は、Tシャツにショートパンツという部屋着と大差ない格好だ。
近い距離で上目で見てくる尚は、一重でつり気味の目をちょっと細めている。
これは今、尚がちょっと不機嫌な証拠だ。
半年前から付き合い始めた一個下の尚は、いつも私に対して偉そうで、生意気だ。
年下のくせに私より大分大っきいところも、なんでもすぐ顔に出てしまう私と違い、感情があまり表に出なくいつも涼しい顔をしているところも、小憎くらしいなと思う。
だけど、そんな尚はこういう時だけ、少し感情が顔に出る。
ちょっと厚めの唇も不機嫌そうに結ばれていて、その表情に充足感にも似た幸福感がじわりと広がっていく。
「なんで?」
「なんでって……普通に出しすぎだろ」
「もしかして妬いた?」
「ふざけんな」
「ちょっ、いひゃい……っ」
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