第8章 ここから始まるラブストーリー

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 わたしはあれ以来、週1回か2回、頼利さんの楽器店のスタジオでジャズピアノを教わっている。レッスン料を巡ってはちょっとバトルがあったけど、わたしがスタジオの掃除をすることで一件落着。  掃除って、そんなに面倒くさい仕事かな? 毎日、子どもたちと一緒に学校の掃除をしてるわたしには、スタジオくらいのサイズの場所をやっつけるなんて簡単なことだ。何なら雑巾がけもやるんだけど、そこまでしなくていいと頼利さんに言われた。  今日の練習は、先ほど終了。スタジオの掃除をしたわたしは地上に戻ってきて、パソコンで会計処理を終えた頼利さんと、冷たいお茶で一息入れている。  7月も1週間が過ぎた。今日、わたしは大きな山を越えた。音楽の授業参観が無事に終わったんだ。 「ああぁぁ、もう、やっと平和に眠れる。さすがにここ数日、プレッシャーで眠りが浅くて」 「お疲れさん。合奏、うまくいったらしいな。らみが学校帰りにここに寄って、さんざん騒いでいきやがった。楽しかった、って」 「練習のときよりもずっと上手にできましたよ。ほんっとに安心した。ほかの学年の先生方も聴きに来られてたから、子どもたちは緊張するかと思ったら、みんな度胸がよくて、お客さんに知ってる顔が増えたって喜んでニコニコしてました」     
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