第1章 ジャズの大海原に飛び込んで

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第1章 ジャズの大海原に飛び込んで

「運転手さん、前の車、追い掛けてください!」  タクシーに飛び乗ったわたしは、すぐ目の前で信号停車している黒くてワイルド系な車を指差した。たぶん四駆とかいうやつ。ごっついタイヤの、アウトドアとかしてそうなアレ。  キョトンとした顔の運転手さんが振り返った。 「あのねえ、お客さん、追い掛けてと言われても……」 「教え子が乗ってるんです! わたし、小学校の教員をやってるんですけど、家庭訪問に来てみたら、教え子があの車の中に引っ張り込まれたの! 父親じゃない男の人が、教え子を助手席に引き上げるところを見たの!」 「そ、それは、確かに心配ですねえ」 「もともと心配なところのある子で、ほっとけないんです! だから、前の車、追い掛けてください! お願いします!」  タクシーの世界って、確かプライバシー云々が厳しくて、映画によくあるような「前の車を追い掛けて!」とか、普通はやっちゃいけなかったと思う。  でも、こっちだって必死。教師もまたプライバシー云々に縛られる職業だけど、いくら何でもちょっと、あの子は問題がありすぎるんです。心配しまくりなんです。絶対このままじゃいけないっての。     
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