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女心と人工知能
新しいマンションに引っ越したトオルは、自慢を兼ねて友人のノブユキを呼ぶことにした。
「いいだろ、見てろよ」
玄関扉の前で、トオルは自慢げに言った。
「ユキ、扉を開けて」
小さなモーターのような音がして、鉄製の扉が開く。
「おお、すごい」
「ここはな、家電のほとんどがAIスピーカーのユキと連動してるんだ。もちろん声紋登録してある声でないとドアは開かない」
「あーそう」
「あ、なんだよ、その声。今時AIスピーカーなんて珍しくないって言いたいんだろ」
二人は話ながら部屋の中へ入る。
「実はな、ちょっとイタズラしたんだよ、ほら!」
今の机に、かなり大き目のフィギュアが置かれていた。肩までピンクの髪を垂らしたメイド姿のフィギュアだ。
「ユキ! クーラーかけて!」
『はい、クーラーをかけます』
フィギュアから声が聞こえて、クーラーが動き出す。
今年は猛暑で、ここに来るまでアスファルトの道は熱せられたフライパンのようだった。冷たい風に、生き返ったような気分になる。
「あ~、気持ちいい。ていうかなんだよこのフィギュア」
「AIスピーカーを中に入れられるように特注で作ったんだよ。ただの無機質な円筒形よりずっといいだろ」
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