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「なぁなぁ、俺の筋肉すごくない?」
「すごいね」
ニヤニヤと笑いながら言う杉崎に、一瞬だけ視線を向けて、そっぽ向く。
消防署内には体を鍛えるトレーニング室がある。
そこでほぼ毎日、トレーニングを重ね、どんな苛酷な状況であっても人命救助ができるよう備えているわけだ。
そこでも、杉崎は俺のところへ来ては、こうしてちょっかいを出してくる。
今も、大胸筋から三角筋、上腕二頭筋の盛り上がった筋肉を動かし、見せつけてきた。
消防士らしい逞しい体。健康的に日に焼けた小麦色の肌。短く刈り上げられた黒く硬質な髪。
それに比べ、俺はいくらトレーニングしても筋肉が付きにくく、周囲の人間と比べると肌も白いままだし、髪は栗色の猫っ毛。
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