第十二話「発覚」

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『今、亜利紗と奏助さんのマンションにいます。奏助さんは留守で亜利紗だけなんですが、彼女の体調が悪いので、心配だから付き添います。今日はここに泊まるつもりです。明日になったら奏助さんが帰宅するので、夜に会う約束は大丈夫だと思います』  ちょっと長い文章になったと思いつつ、とりあえず送信した。  すると、すぐに一砥から折返しの電話があった。 「もしもし。花衣です」  驚いて花衣が電話に出ると、いつもの愛想のない声が「俺だ」と答える。 「亜利紗と一緒に、奏助の所にいるそうだが、亜利紗の具合が悪いというのは本当なのか」 「あ、はい……。今、隣の部屋で休んでいます」 「どうして亜利紗と……、ああ、ひょっとして、明日がバレンタインだからか」  一砥がバレンタインデーを覚えていたことが意外で、花衣は「あ、はい。そうです」と戸惑いつつ答えた。 「亜利紗と一緒に、チョコ作りをしていたんです。よく明日がバレンタインデーだって知ってましたね」  一砥は素っ気なく「まあな」とだけ言った。  毎年バレンタイン前日の十三日に、秘書の紘生から「明日はおそらく大量のチョコが届きますけど、いつも通りに処分してよろしいですか」という確認があるために、一砥も毎年、「ああ、もうバレンタインの季節か」と思うのだった。  一砥は敢えて話題を変え、「それで、亜利紗のことだが」と言った。 「実は奏助に相談されていたんだが。あいつ最近、何か悩んでいないか」 「えっ?」     
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