第十八章 天狗(3)

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第十八章 天狗(3)

「こおのどすけべ中年おやじが!!」 「痛い! ひな??」  突然師匠様の後ろから愛らしい声がした。それと同時に師匠様の頭に炊飯用の飯釜が振り下ろされる。良い音がし、崩れ落ちる師匠様の後ろから、赤の絣の着物を着て三つ編みを結った、私と同じか私より少し年若い娘さんが顔を出した。 「大丈夫? ごめんなさい。いい年して、みっともないおやじなんです。はあ」  その娘さんは大げさにため息をつく。 「けが人は、いつも早く部屋で手当てしないと駄目って言ってるでしょう」 そして私の後ろで倒れている才四郎を見て、息を飲んだ。 「火傷を負ってる……。急いで手当てをしないとです。忍者さんたち! 早くこっちへ運んで下さい。手伝ってくれないなら朝飯は抜きな上に、怪我しても放っておきますよ。いいんですか!?」   彼女の声に、渋々という体で一人の忍が才四郎を抱き上げた。 「一番奥の部屋に入れてください」  彼女が私の手をとって引き起こしてくださった。 「私は雛菊って言います。譲二の所で薬を作る仕事をしています」 「私は小春と申します。雛菊様、ありがとうございます、恩に着ます」 「ひなって呼んでください。さあ行きましょう」     
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