バーコード刑事

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美しさの定義は、人それぞれだ。 隣の誰かが美しいと感じていても、後ろの誰かが醜いと感じる場合もある。 風景や絵画、音楽、そして、異性に対して感じる美しさ。 異性に対する美しさは、人それぞれ好みが別れるのは、言うまでもないだろう。 顔立ち、髪の毛、指先、そして、脚の形。 美しいと感じる脚の形も人それぞれ。 すらりと棒のように長い脚が美しいと感じる者もいれば、長さよりも程よい肉付きがあったほうが美しいと感じる者もいる。 俺の場合は、全体的にはすっと伸びているけれども、ふくらはぎに程よい肉付きがあったほうが美しいと感じる。 肉付きといっても、あまりにも筋肉質なのは、好みではない。 かといって、歩くたびに揺れるほどの、柔らかすぎるふくらはぎも惹かれない。 健康的な色合いで、肌触りも艶やかでなめらかな方がいい。 そんな理想的な脚を、俺は日々探していたのだと思う。 無意識のうちに、すれ違う女性の脚を見てしまう。 通勤客で込み合う電車に乗り、目的地へ向かう、ある朝。 やはり、同じ車両の女性の脚が、つい、視界に入ってしまう。 不審に思われるので、じっくりと眺める事はない。 つり革につかまりながら、無表情を装い、視界の隅にある脚の形を、ひっそりと吟味する。 若さや、美人かどうかは問題ではなく、興味もなかった。 ただ、純粋に、理想的な脚の形を探し続けて、二十七歳の秋。 ようやく、見つけた。
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