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ちらっと片目で自分の従者を探せば、オリヴァーは話を振られないよう完全に空気と化して窓から外を眺めていた。石像のようだ。
壁と同化してんじゃねえよと蹴り飛ばせたならどれだけいいか。
「やあ、婚礼衣装の仕立てかい?」
「うわ…」
ただでさえ疲弊しているというのに部屋に勝手に入ってきた男にハイドは心底嫌な顔をした。
「暇なんですか、王太子殿下」
「どうして私のことはお義兄様と呼んでくれないんだい?」
「はあ、恐れ多くて」
「残念だな」
アリージャは寝椅子に座ったまま投げやりな返答をするハイドに笑いを零した。
不敬極まりない態度だがアリージャ本人あまり気にしてはいないらしい。
「しかしそうだな、私としては青色がこの白い肌にはえて綺麗だと思うんだが…」
「触らないでもらっていいですか」
「つれないな。少しくらい…」
「あら大変手が」
アリージャがハイドに触れようと手を伸ばす。
その途端ジャーミアが部屋に飾ってあった花瓶の水をアリージャにぶっかけた。
「え…?」
突然の水責めにぽかんとしたアリージャは水滴を髪から落としながら振り向いた。
ジャーミアは悪びれず花瓶を置いてにっこりと微笑む。
「お許しくださいませ王太子殿下、私ったらとんだ無作法もので」
「まあまあアリージャ様びしょ濡れですわ。さあお召替えをしてきてくださいませ早く」
「え、ちょ、何だ」
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