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気がつくと、アスファルトの上で仰向けに倒れていた。
どうしてこうなったのか思い出そうと頭に触れると、酷く頭が痛んだ。
頭に残響する鈍い痛みを堪えて、なぜか鈍重な体を起こすと、ありえないものが視界に入った。
「あれ……なんで俺の前に俺が」
自分と全く同じ顔の人間が、自分と同じような体勢で眼前にへたりこんでいた。
次に俺がとった行動は、とりあえず、ほっぺをつねってみることだった。しかし痛いだけだった。
「夢じゃないのか」
だとしたら一体何がどういうことなのか。何が起こったのかは分からないが、道路のど真ん中で意識を失い、起きたら目の前に自分がいるというのはただ事ではない。
何か解決の手がかりになればと、この状況が生まれる直前までの記憶を遡って整理することにした。
今朝は珍しく寝坊してしまって時間がなく、制服に着替えて大急ぎで家を出た。それから、近道するために通学路ではない道を通って学校に向かって走っていた。そしたら、十字路の角から暗い空気を纏った人が現れた。
そして、気がついたら道路で寝ていて、起きたら目の前に自分がいた。
更にはダメ押しと言わんばかりの体の異常。いつも以上に多い汗の量や重く感じる体に加えて、殴られたような頭の痛み。それどころか、目の前で困惑している自分の額も、流血しそうなほど赤く荒れ上がっている。
そこまで現況を鑑みて、自分の置かれた状況が、数々の創作物に出てくるシチュエーションに酷似していることに気づいた。
恐る恐るカーブミラーに目をやると、自分が映っていなければならない場所には、ブサイクで肥満体型で息のくさそうな、いかにもオタク然とした風貌の男がいた。
「…………マジでか」
信じられないことだが、通行人と中身が入れ替わってしまったようだ。
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