恋のマッチアップ番外編 膠着状態

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 自分を抱きしめながら偉そうに胸を張り続ける加賀谷に、笹良は冷凍庫並みに冷たい視線を送った。 「自画自賛するなんて、加賀谷らしい……」 「バスケもエッチも上手な俺のこと、笹良は意識しない?」  加賀谷は『好き』という言葉をあえて封印して、笹良が答えやすいように誘導する。そんな考えをあっさり見破っているだけに、笹良は素直に答えるのが悔しくてならなかった。 「どうだろうな……」 「気にすれよ」  意味深に微笑むなり、笹良の背中に触れていた手が、ゆっくり下りていく。背中から腰へ、そして――。 「ちょっと待てっ!」  リーチの長い加賀屋の腕を、笹良は慌てて掴んで動きを止めた。 「さっきは、指2本しか入らなかったからな。あと1本増やして、次回は是非とも俺のを挿入できるように、少しでも馴らしておきたいなと思ってさ」 「2本でもヤバかったのに、これ以上俺の躰を改造しないでくれ……」  加賀谷の腕を握る手の力を、笹良は視線を伏せながらぎゅっと込める。 「笹良、どんな感じでヤバかったんだ?」  加賀屋は動きを止められた腕をそのままに、笹良の耳元で囁きかけた。 「そりゃあ、裂けそうな感じというか」 「2本くらいで裂けるかよ。俺のを挿れるのに、あと何本必要かわかってるだろ?」  艶を帯びた加賀屋の声に、笹良はあくせくするしかない。躰に直接触れられているわけじゃなく、ただ耳元で話しかけられているだけなのに、おさまった熱が再燃しそうになる。 「あと何本って、そんなの――」 「俺ので笹良の中を、めちゃくちゃにしたい。感じるところをごしごし擦って、俺のカタチを覚えさせながら、笹良を絶頂させたいんだ」 「絶頂っ、なに言ってんだ加賀屋……」 「イってるときの笹良、可愛いしエロいし、すっげぇ大好き」  加賀屋の吐息が耳に吹きかかったせいで、笹良が目を閉じながら肩を竦めると、腕を掴んでいた手の力があっという間に緩んだ。加賀谷はそれを見計らって、双丘を鷲掴みする。 「ひっ!?」  簡単に再燃した笹良の躰の事情を知ってるくせに、加賀谷はそこには触れずに、ほどよく筋肉のついた双丘を優しく揉みしだいた。このまま流されてくれますようにという卑猥な想いを込めながら、ベッドの上で仕掛けた加賀谷の行為に抗いたいのに、笹良はなす術がない。 「や、やめろよ……」  先ほどと同じように手を掴んで止めればいいことがわかっていながら、快感に打ち震えた躰はそれを拒んだ。 「加賀谷、怖いんだ。すべてをあげたあとでおまえに捨てられたら、イップスを患った頃に戻ってしまうんじゃないかって。そうなったら絶対に立ち直れな――」  ありえない話を震える声で語る笹良に、加賀谷は言葉を奪うくちづけをした。自分の中にある想いを注ぎ込むようなそれに、笹良は黙って身を任せる。  暫しの深いくちづけのあと、加賀谷はバスケのプレイをするときの顔つきで、目の前にいる愛しい人を見つめた。いつも以上に真剣なまなざしに、笹良の胸がいやおうなしにときめく。そこにいるのは惹かれて止まない、加賀谷の姿があったから。 「笹良には、コートでボールを追いかけるように、俺のことも追いかけてほしいと思ってる。俺もこれから、おまえだけをそうやって想っていく。今回みたいに引きこもって、笹良を待ち伏せするような手の込んだことは、今後一切やらないつもりだ」 「……本当か?」 「この黄金のレフティを賭けてもいい。大好きな笹良に誓うよ」  にっこり微笑みながら左手を見せた加賀谷に、笹良は右手でぎゅっと掴み、不機嫌丸出しのまま手の甲にキスを落とした。 「笹良?」 「契約成立だよ、バカ加賀谷。スタメン入りできないおまえを、俺は待ってるからな!」 「言うじゃないか。試合中でも思い出しちゃうくらいのヤツを、笹良の躰に教えてやるよ!」 「いきなりやめろって、ほどほどにぃっ!」  笹良が抵抗する力をうまく使って、ふたり仲良くベッドの上に倒れ込む。慌てた笹良は逃げる余裕は当然なくて組み敷かれたが、加賀谷に捨てられるかもしれないという気持ちは、不思議とすっかりなくなっていた。 「加賀屋、好き……」  消え入りそうな笹良の声が加賀屋の耳に届いた瞬間、互いを引き寄せ合って強く抱きしめた。  コートだけじゃなくベッドでも、ふたりは譲らないマッチアップが続けられたのだった。  愛でたし♡愛でたし 次回作の公開は【シェイクのリズムに恋の音色を奏でて♡】になります。
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