数時間後の真実

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「怒るなよ。悪かったな、付き合わせて」 「悪くないですよ、仕事ですから。私、助手ですし」 三人しかいない探偵事務所だけど。 もう1人の社員は別件を調査中だ。 「それに私………。ぃえ、なんでもないです」 嬉しいです、と言ってしまいそうになり慌てた。 所長の助手として同行できることが、とても嬉しいのだ。 「なんだ。言いかけてやめるな」 ………言えるわけない、所長が好きだなんて。 大人の年齢になってもまだ自分に自信がなくているのに。 「私、以前からここに来たかったので」 雪景色と滝の絶景が有名なここは写真が趣味の私にとっては憧れの場所だった。 「仕事じゃゆっくり見て回れないな」 「写真一枚でも撮れたら満足です」 「じゃあ今度、仕事抜きで来てみるか。春には桜の名所になるだろ。あ、動き出したな。行くぞ」 あの二人が広場から出ようとしていた。 「は、はい………」 所長が先を歩き出してホッとした。 赤い顔、見られたくない。 その後結局、男と愛人の決定的瞬間になるような写真は撮れなかった。 一度だけ、愛人が男の腕に手を伸ばしたが。 男はその手を取ることはなかった。 好きって気持ちが冷める瞬間って、どういう感じなんだろう。 私の推理は当たっているのかもしれない。 「私、二人の写真撮らなくてよかったと思ってます」 帰りの車中で私が言うと、所長は少しだけ驚いたようにこちらを見た。
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