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「今はやめておこう」
カメラを構えた私に所長が言った。
「なぜです?証拠写真になるチャンスなのに」
「もう少し泳がせた方がいい」
せっかくの決定的瞬間なのに!
「せっかくだが我慢してくれ」
何も言ってないのに。
まるで私の心の声が聞こえたみたいに所長は言った。
「並んで歩いてるだけじゃ説得力に欠ける。それに彼は警戒してるようだ」
「もしかして、自分が素行調査されてることに勘付いてるとか?」
「それはないだろ。気付いてる奴が堂々と愛人と旅行するか?」
「それもそうですね。それじゃ、あの二人ではなくて美しい雪景色を撮ってもいいですか?」
所長は頷きながら、俺も一枚撮っておこうかなと言って携帯を取り出した。
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