#9 欲望と淫欲と

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 思い出せば思い出すほどに、骸の興奮は高まっていった。さあこれからどうするかと考えていると、唐突に「副船長は何を考えてるんだ! たかが女の代わり、しかも敵船の副船長だった男に、印である烙印をくれてやるなんて!」という、今の骸にとっては、非常に興味深い話が耳に流れ込んできた。  ジョッキをあおるふりをして、ちらりと右後方に目を走らせる。テーブルについているのは二人。各々の服には、ガルドの紋章が入っていた。まさに今、内情を知りたいと思っていたところだった骸には渡りに船だった。 『面白い話が聞けそうだ』  骸はジョッキで隠した口元をいびつに歪めてほくそ笑んだ。はたして彼らが言う『敵船の副船長』とは……?  骸は二人の会話にしばし耳を傾けることにした。 「よほど具合が良かったんだろうよ、手放したくなくなるほどになぁ」  そう言った男は品のない笑みを浮かべている。相手の男も、そこには深く頷いていた。 「たしかに、皆の前で船長に拓かれた時の姿はさすがにゾッとしたぜ。前日の啖呵が嘘みたいに、艶っぽかったなぁ」 「まぁ、中から溢れるほど副船長の子種を注ぎこまれてさ。しかもだぜ、それをガルドのみならず、自分の船の奴らにまで見られちゃあな。もうどこにも行けねぇだろう?」  男たちはカチンとジョッキを合わせて、一気に酒をあおる。その勢いでさらに話を続けた。 「俺たちにもあいつで楽しませてくれりゃあいいのになぁ」     
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