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「お前が、蓮見沙羅?」
それから一週間経ち、部活終わりに沙羅は一人で人通りの少ない路地を歩いていた。いつもこの道を通るが、直が一緒だったことが多かったのと、前世で通った山道に比べれば、沙羅は怖くもなんともなかった。
沙羅は、暗くなってから女が一人、人通りの少ない道を通る危険さを理解していなかった。
今初めて、沙羅は思った。
そっか、こういうことになるのか。
男は三人、中学生では無いように見える。高校生か、それ以上?と沙羅は考えた。一人は髪の色が透き通りそうな金髪。残りの二人の髪はそこまででは無いが、茶色に染まっている。三人共、変なジャージを着ている。
沙羅が返事をしないのは怖がっているからだと思ったのか、一人が、沙羅の腕をぐっと掴む。
その腕を反射的に捻り上げた。
「いてててて・・!」
男がバッと離れる。
唖然とした顔が、一瞬で怒りに染まった。
「てめぇ!!」
飛び掛ろうとした男を、もう一人がニヤニヤしながら止める。
「?」
様子を伺う沙羅の前で、男はポケットから何かを取り出す。カチャ、と開かれたそれは、街灯の光を反射して煌く。
ナイフ・・!
沙羅の身体は、金縛りにあったかのように固まった。
動け、ない。
大人しくなった沙羅を、ニヤニヤしながら後ろからもう一人の男が羽交い締めにする。沙羅の全身に鳥肌が立った。
へへ、と笑う男にが、ナイフをピタリと沙羅の首につけた。
「あ・・」
フラッシュバックする恐怖に瞳孔が開き、寒気がとまらない。
怖い。
沙羅は、せめてそれを見ずに済むようにと、目を閉じた。
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