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相原が急に来訪する。
家の場所は知っているから、確かに可能な話だ。
まさかと思いつつも相原のそんな姿を想像して……一瞬だけ、確かにあり得ると沙和は思った。あの引き際の表情は沙和を諦めたからだと解釈していたけれど、そうではないとしたら……?
急に寒気が走り、沙和は自分で自分を抱きしめた。アルコールによる浮遊感が一気に遠ざかっていく。
「確かに、俺も島谷の言うことは一理あると思いますよ」
椎名まで神妙な顔をして、壮太の言葉を後押ししてきた。
それに沙和は反論したかったけれど、彼女自身、百パーセントの自信は持てそうにない。
「今日くらいは用心しとくにこしたことないって。……で、どっち?」
「望月さん、俺もちゃんと候補に入れて考えてくださいね」
二人とも目がすわっている。
壮太は一気に畳み掛けてくるつもりだ。
長年の付き合いからそれが分かった沙和は、間をあけるためにも店員からお茶を持ってきてもらうことにした。ただ、しばらくして熱い煎茶が運ばれてきても、二人は表情を変えないままである。
ほんの少しの時間では、今出されている選択肢を受け入れるだけで精一杯だ。
「ほら、決めて」
壮太は大真面目な顔で、選ばないと許さないとでも言いたげだ。
ふってわいた選択の時に、沙和は戸惑いながらも二人の男をじっくりと見比べて……
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