先にあるもの

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でも、俺たちが卒業間近の時に事件が起きたんだ、その事件に巻き込まれた琴は記憶を失った。 それも大好きな翔のことだけを…。 翔もその事件以降、琴の前から姿を消した。 許せなかった。 一番辛い状況の琴の事を見捨てるなんて・・・。 だからこれからは俺が、琴を守るって決めたんだ。 琴の隣にいられるだけで幸せだった。 この幸せが続くと思っていたのに、事件から5年も経って翔はまた、琴の前に現れたんだ。 翔との記憶がないのに琴が翔に引かれていっていることにすぐに気がついた。 今度こそ翔には渡せないと思い、アメリカ支社を成功させるため渡米する前に琴へ俺の気持ちを打ち明けたんだ。 でも、見事に玉砕・・・。 本当は、分かっていたんだ。昔から琴と翔の間に割り込むことなんて出来ない事を・・・。 そして昨日、翔から手紙が届いた。琴との結婚が決まったと・・・。 本当に、大好きだったよ。琴。いや、愛していたよ。でも、琴には幸せになって欲しいから、この言葉を送ります。 俺は、夕焼けに染まった空を見上げて言葉にしてみた。 「琴、結婚おめでとう。今度こそ翔と幸せになれよ」 俺の想いは空高く吸い込まれていった。 長い長い片思いは終わった。 俺にはこの先、何があるのだろう。 琴ほど愛する人に出会えるだろうか・・・。 でも、俺も幸せになるよ・・・。 俺は前に進む・・・。 進むことしか俺には出来ないから・・・。 そして俺は思い出の丘を後にした・・・。 完
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