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「えぇ。まだ俺、何も言ってないっすよ」
「うん。でも、ごめんなさい」
何も言えずに断られた彼は、は寂しそうな瞳をしたまま、旭の様子をじっと見つめていた。
捨てられた子猫のような瞳で見るものだから、「旭さん、とりあえず聞いてあげたら」と瞳子が助太刀をする。
あまりに優しい声で言うものだから、聞かなくてはいけない雰囲気になってしまった。
「あぁ。分かりました。とりあえず、聞きます。とりあえず、ね」
「やった。ありがとうございます」
ニコニコする大貴を見ていると、弟がいたらこんな感じだったのだろうか、と姉のような気持ちになってしまう。
離婚の件があってから更にドライになっている旭にとって、彼のように慕ってくれるのはとても有難いことだけれど、恐らくこれから発する願い事については、あまり良い予感がしない。
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