プロローグ

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  22世紀初頭 ――      首都圏の中でも、関東地方南部の   東京都・埼玉・千葉・神奈川の1都3県にある   日本屈指の歓楽街は超人口過密状態エリアだ。         市街地は無限に拡大を続け……。      大雑把に言って、   東京都と神奈川県の新市街地を中心に、   西側のウェストエンド地区が富裕層。   東側のイーストエンド地区が貧民層。   というように色分けされ、   イーストエンドのスラム街は   貧困労働者とホームレス、   現役犯罪者と刑務所帰りの人間(元犯罪者)と   浮浪児で膨張し ――、   ピラミッド型社会の頂点に君臨しこの街の治安と   秩序と風紀を守っているのが、   元々この地に根付いていた広域指定暴力団   煌竜会だ。    ”毒を以て毒を制す”の諺通り、     ここ、イーストエンド少年院は、政府が   直轄統治・運営・管理しており、   収容された子供達は皆、その直後から   何らかの仕事を半強制的にやらされていた。   商店の下働き(使いっ走り)・路上での靴磨き・   子守・性奴隷・物乞い 等など……    こういった施設の共通した大きな特徴は    ”収容児童の入れ替わりがかなり頻繁    である” という事。   収容児童の年齢のボーダーは満15才まで、   で、誕生日の翌日には如何なる理由があろうと、   成人として扱われ郊外*ヶ所にある刑務所へ   問答無用で追い立てられる。       そんな慣例に従って問答無用で刑務所へ押送   されようとする15才の誕生日1日前に、幸運にも   満期退院を迎えた1人の少女が玄関の戸口に   立った。   見送りはもちろん出迎えの大人など1人もいない。   少女は孤児なのだ。   荷物といえば小さなショルダーバッグひとつと   小柄なその少女には身に余る大きさの   ギターケース。   満期退院に先立ち施設長から贈られた言葉も   素っ気ないものだった ――   『いいか、48時間以内に矯正局へ出頭するん    だぞ。違反した場合は即刻、逮捕され女子刑務所    送りだ』   少女は”どうせ、行くあてなどないのだから”   刑務所暮らしもいいか、と、思ったが、   とりあえず今夜の寝倉を確保するため、 「―― さぁ~て、どこに行こうかなぁ」   誰に言うともなく呟いて、雑踏の中へ足を進めた。
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