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高校2年生から3年間付き合っていた康太が亡くなったのは2年前の冬。
康太が亡くなって最初の1年間は私の時間は止まってしまい、ずっと家の中に閉じこもっていた。
このままではいけないと思い、それからは康太とデートした場所に1人で出かけては、思い出を振り返りながら懐かしい場所の写真を撮っている。
今日は1月3日、3年前康太と初詣をした熱田神宮に来ている。
参道を歩いていると、あの日の思い出が浮かんでくる。
「(康太、ここで私がマフラーを落として、康太が拾って首に掛けてくれたよね。
今、同じマフラーをしてるんだよ)」
家族にも友達にも、もう2年も経っているんだから、そろそろ康太を忘れて新しい恋をしたらって言われてる。
だけど……忘れられない。
康太が座っていたベンチ、パシャ。
私がお手洗いに行っている間に買ってきてくれた鯛焼き、あの鯛焼き屋さんで買ったんだね、パシャ。
まるで昨日の事みたい。
それから、ここで康太が……
「真紀……」
えっ? 今の康太の声? まさかね、康太がここにいるはずないもの。
「康太?」
きっと風の音を勘違いしただけ。 わかっているのに小さい声で康太を呼んでみる。
返事はない。
当たり前だよね。 康太はもう2年も前に死んじゃったんだから。
康太のお母さんから、康太が車に跳ねられたっていう電話をもらって、頭が真っ白になったまま、タクシーに飛び乗り、病院に駆けつけた日の事が頭に浮かんだ。
何度思い出しても涙が溢れる。
「真紀、泣かないで」
やっぱり康太の声だ!
「康太、私、ずっと康太を思っていたよ。
康太、もっと話して」
すぐに答えてくれると思ったのに、それからしばらくの間、康太の声は聞こえなかった。
「康太、私も康太のところにいきたい」
もう生きているのはつらすぎる。 お願い、康太、私を一緒に連れて行って。
「真紀、カメラを見て」
しばらくすると、また康太の声が聞こえた。
カメラ? 意味が分からないままレンズを覗くと、あの日の光景が見える。
手を繋いで楽しそうにしている私と康太、たい焼きが熱くてふうふうしてる私を、笑いながら見ている康太。
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