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※ ※ ※
「頭中将殿だけど、最近は御自分の行いを省みるようになったそうだよ」
「わたくしも侍女から聞きました。最近は北の方様の所にまた足繁く通うようになったそうです。直にややこが産まれますからね」
敦宣の対屋。話している敦宣と範子の上、アタシがいるのはいつもの梁ね。
自慢の翅を閃かせながら思い出すのは、ふたりの話の渦中にいる頭中将のことよ。
あんな移り気な男、釘を打ち付ける音をきかせるだけじゃなくて、もっと懲らしめてやってもよかったのに。例えば、送り主をわからなくして怪文書を送り付けるとかさ。アタシの提案に、敦宣は「範子さまに免じてあれくらいにします」と言って実行しなかったんだけど、その表情がね、まぁ満足気だったもんだから。こっちは、はいはいごちそうさま〜って感じ。
下を見ると、範子と楽しそうに話す敦宣がいた。嬉しそうに笑う敦宣を見て、何だか感慨深くなっちゃうわ。
ほーんと、あの敦宣がねぇ…。
あの子に喚び起こされて、初めて会った時の何処か張り詰めた表情を覚えているだけに、まさかあの子がこんなに柔らかく笑うようになるなんてね。それに、一丁前に焼き餅焼くなんて。
これも帝の覚えも目出度い頼もしい婚約者のおかげね。
でーも、結婚は、
「まだまだ先じゃないと、このアタシが認めないんだからね」
呟きながら舞い降りる。
「え?」
すると、敦宣と範子が不思議そうに首を傾げる。
その仕草があまりにもそっくりだったものだから、長年連れ添った夫婦は似てくるというけど、まだ夫婦になってないのに似てくるのが早すぎるのよと、アタシは笑って敦宣の肩に留まった。
【完】
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