彼と僕

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彼と僕

 そろ~っと廊下に顔を出す。 「あはは、ヤダなぁ」  …彼は女の子五人に囲まれ、楽しそうに話をしている。  よし、今なら大丈夫そうだ。  僕はカバンを抱え込み、そっと教室を出た。  気配を消し、息を詰めて、静かに足音を立てずに廊下を歩く。 「一人で帰るなんてつれないなぁ。せっかく待ってたのに」 「ひっ!」  しかし十歩も歩かないうちに、彼に気付かれてしまった。  僕はゆっくりと振り返り、彼を見る。 「いっいや、そのっ、かっ彼女達と楽しそうに話をしているから…」 「うん、だって遅いんだもん。待ちくたびれちゃったよ」  彼は肩を竦め、女の子達に微笑みかけた。 「じゃあ待ち人来たから、オレは帰るね」  途端に女の子達は不満そうな声を上げる。 「またおしゃべりしようね。バイバイ」  しかし彼はスッパリ切り捨て、僕の元へ来た。 「遅かったね、掃除当番」 「うっうん。ちょっとふざけている男子がいて、遅く…」  ハッ! 言ってはいけないことを口にしてしまった。  慌てて口を押さえるも、彼はニッコリ微笑んだ。 「…へぇ? 誰、そのふざけたヤツ?」  僕は口を押さえながら、首を左右に振った。 「言えよ。そいつのせいで、遅くなったんだろう?」     
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