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じわりと滲む涙を堪え、精一杯の怒りを瞳に乗せるサエ。
逸らさない。絶対に逸らさねぇ。
「き、騎士様は優しいけど、アルディさんは優しくないです」
「うん。……それで?」
「騎士様は愛を囁きますが、アルディさんは極たまにって言うか……」
「うん。……他は?」
「ひゃ、百戦錬磨だって……」
「うん。……仕事だからな。しくじるわけにはいかないだろ?」
零れた涙を指で拭い、赤くなった鼻から出る鼻水も、つまんだ袖先で拭いてやる。
きったねー顔だな。崩壊しまくりじゃん。
なのに、やっぱり可愛くて仕方ないと思うんだ。
「わ、わたしがイモだから、騎士様みたいにしてくれないんですか?」
……そこかよ。
ようやく触れたサエの本音は、たぶんずっと1人で思い悩んでいただろうことは、容易に想像がついた。
「サエ。もう忘れてんのか?
俺はお前がイモだけど可愛いって言ったし、イモだけど好きだって言ったし、イモだけどキスするぜ」
それに、
「何とも思ってない女に嘘は吐けるけど、サエには本当のことしか言わない。言いたくない。キス以上のこともお前と、イモだって思うお前とスゲェしたくて死にそうになってんだけどな」
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