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「なんだおまえ、もう起きたのか? もうちょっと寝てろ」
肩越しにシリルが頭に手を置くと、その頭が肩口に伏せられたまま左右に振られた。
「悪かったな、不安にさせて」
言いながら、躰の向きを変えたシリルは正面からその痩身を抱き返した。切り替え機能がついているから、長期間飲まず食わずでも餓死することはない。そう断言していたにもかかわらず、腕の中の華奢な躰は、たった3日でさらに肉が薄くなっていた。
居合わせた巨漢が、目のやり場に困って顔を赤らめている。リュークが相手だと、どうにもその外見のせいで同性であるという意識が薄れるらしかった。
「おまえ、ちゃんと食ってないんだって? しっかり食わねえと体力持たねえぞ」
声をかけても、リュークはシリルにしがみついて応えない。シリルは苦笑すると、言いかたを変えて声のトーンに諧謔を滲ませた。
「俺の腹が減ったんだよ。大量に血ィ流したからな。栄養不足と貧血でぶっ倒れそうだ」
言った途端に、リュークは蒼褪めた顔をパッと上げた。
「すぐに用意します」
立ち上がるなり、短く応えて身を翻す。そして、イーグルワンへ駆けていった。
その様子を呆気にとられて見ていたマティアスが、リュークの姿が完全に消えるのを見届けてから振り返った。シリルはそれへ向かって無言で肩を竦めてみせた。
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