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もういいよ。ゆるしてやろう。来るか? 忍」
彼の手がさしだされる。
白大理石の壁や、緋毛氈の床、クリスタルのシャンデリア、黄金細工の彫像ーー室内の景色が急速に薄れていく。
白い闇のなかに、召喚機だけが熱い光を放った。
忍は目の前に浮かびあがる金色の門を見た。
あの人が門のなかから手をさしのばしている。
その姿は、禍々しい黒衣の将軍ではなくなっていた。
忍の望む姿だ。全身が光に包まれている。
忍はその人の手をつかんだ。
生まれ変わるのだ。
この瞬間に現実の自分は死んで、別の存在へと変わる。
九龍忍としての生涯は、ここで終わる。
だが、悲しむ必要はない。
永遠が待っているのだから。
門をこえると、王女が笑っていた。
ナインスドラゴンは、その人の名を呼んだ。
「ルミエール。あなたに会いたかった」
「わたしもよ。ナインスドラゴン」
「あなたは私の光だ。私はあなたを守るガーディアンなのだ」
ナインスドラゴンは美しい少女を抱きしめた。
帝都をおおいつくしていた暗雲が切れ、金色の光がさした。
邪悪な将軍が消え、光の王女がとりもどされたからだ。
都には平安がもどってきた。
帝都の窓という窓から人々が顔を出し、布をうちふって平和を喜びあった。
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