六章 夢の終わりに-3

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もういいよ。ゆるしてやろう。来るか? 忍」 彼の手がさしだされる。 白大理石の壁や、緋毛氈の床、クリスタルのシャンデリア、黄金細工の彫像ーー室内の景色が急速に薄れていく。 白い闇のなかに、召喚機だけが熱い光を放った。 忍は目の前に浮かびあがる金色の門を見た。 あの人が門のなかから手をさしのばしている。 その姿は、禍々しい黒衣の将軍ではなくなっていた。 忍の望む姿だ。全身が光に包まれている。 忍はその人の手をつかんだ。 生まれ変わるのだ。 この瞬間に現実の自分は死んで、別の存在へと変わる。 九龍忍としての生涯は、ここで終わる。 だが、悲しむ必要はない。 永遠が待っているのだから。 門をこえると、王女が笑っていた。 ナインスドラゴンは、その人の名を呼んだ。 「ルミエール。あなたに会いたかった」 「わたしもよ。ナインスドラゴン」 「あなたは私の光だ。私はあなたを守るガーディアンなのだ」 ナインスドラゴンは美しい少女を抱きしめた。 帝都をおおいつくしていた暗雲が切れ、金色の光がさした。 邪悪な将軍が消え、光の王女がとりもどされたからだ。 都には平安がもどってきた。 帝都の窓という窓から人々が顔を出し、布をうちふって平和を喜びあった。     
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