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1 宇宙生活の終焉 【プロローグ】
これは、生まれたときから宇宙船で暮らす僕と、同級生で婚約者の彼女との、物語。
*
1
部屋の照明が突然落ちた。
一瞬、闇に包まれ、間もなくオレンジ色の光が灯る。
――なんだこれは? 今まで見たことのない現象に僕は困惑した。
部屋の外から複数の声が聞えてきた。切迫した響きだ。嫌な予感に鼓動が速まる。僕は自室を飛び出した。
通路も僕の部屋と同じく暖色のライトが照らしていた。日頃目にする白色灯とは異質の不自然な色。どうやら船内全体が同様の状態らしい。
リビングから父さんの怒鳴るような声がした。駆けつけると母さんと弟も集まっていた。
食事の用意をしていたのかエプロンを身につけた母さんが、父さんを見下ろしている。その顔は蒼白だ。父さんは壁の大型モニターの前に陣取り画面をにらみつけていた。小学生の弟は父さんの後ろで呆然とたたずんでいる。
父さんは床に置いたキーボードとタブレット端末を凄まじい速さで操作していた。モニターにはこの宇宙船の図面やプログラムコードのようなものが表示されている。見慣れたホーム画面とはまったくの別、無機質なインターフェイスに僕はとまどう。
母さんが父さんに「あなた……」と声をかけた。
「だめだ。ウラヌスがほぼ制御不能に陥っている。このままだと電力、空調、酸素供給、どれも停止する」
父さんはモニターを凝視したままつぶやいた。
停止? 僕が聞き違えたのだろうか。今、父さんの挙げたものはすべて、この船の乗員たる僕たちの生存に直結する。それらが絶たれるということはすなわち。
「父さ――」
「ねえ、俺たち死んじゃうの?」
父さんに確めようとしたとき、弟のグミがぽつりと言った。
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