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「あ。それは言っちゃダメー」
同期の葉子とお昼を食べていたとき、いつものろう学校の子たちの話をした。
手話をすごいと思ってはいけないのだろうか?
「だって両手で言葉を表現するなんて私には未知の世界で凄いんだけどな」
「手話を必要とする人も私たち言葉を発する人もどこにも違いはない。
会話とかコミュニケーションをとらないといけない。そこをスゴイ、と思うのはね?」
話を聞いていくと葉子は大学時代に手話サークルに入っていたとか。入ったのは単なる好奇心だったけど、手話を知り、実際ろうあ者の人と触れ合ううちに『どこにも違いなんてない』と気が付いた。
言われてみれば私に『話せて凄いよ!』と言われても返答に困る。
私にすれば話せるのは特別でない、だから手話も特別ではないことを葉子が教えてくれた。
「そう、か。うん。そうだよね」
喋っていたせいで冷えてしまったコーヒーを飲み干す。
そしてちょっとだけ考え事。
「ふふ、いいよ。教えてあげる。紀子には声も手話もいらないときがあるんだから」
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