89人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
男はやっとマフラーをほどいた。
「よお、じいさん」
耳元で怒鳴られて、老人がびくりと体をふるわせた。
「……うう、う?」
「おい、おれを見ろよ。かわいい孫の顔を忘れたとは言わせねえぜ」
男は自分の顔をぐいと老人の顔に近づけた。
「お、おまえ………」
ほとんど抜け落ちた眉の下で、老人の目が大きく見開かれた。老人は目の前の人物が信じられなかった。
「わしの、孫だと……?」
こめかみに老班が浮き、薄い眉毛と鉤鼻がついた顔。それは老人の顔と瓜二つだった。
男は笑った。
「そうだよ、整形したのさ。おれが脱獄して逃げ回っているとでも思っていたのか? しかし、まあ……あんたが保釈金を出してくれていれば、こんな計画は思いつかなかっただろうがな」
「計画じゃと? い、遺産は、一銭たりとも、ゆずらぬぞ」
老人は執事を呼ぶためのベルに手を伸ばした。だが男は素早くサイドテーブルの上からベルを取り上げた。
最初のコメントを投稿しよう!