出会い

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「う~ん…、人間はここまで入って来れないはずなんだけどなぁ。おまえがここから出るには、陽がもう少し落ちないと駄目だ」 彼の言葉に、僕はまた涙をぽろぽろと零した。 「うぇ…っ、凛、帰れないの…?ふぅっ、うわぁん」 彼は慌てて、僕を優しく抱きしめてきた。 「だ、大丈夫だ…っ。俺がちゃんと連れて帰ってやるから。な?だからもう泣くな…」 彼に背中を繰り返し撫でられて、僕の涙もだんだんと落ち着いてきた。僕は、彼の胸に顔を擦り付けて、すんすんと鼻をすする。 しばらくして僕はそっと彼を見上げると、「銀ちゃん…ありがと…」と言って、ふわりと笑った。 その瞬間、彼が驚いた顔をした後にほおを赤く染め、抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。 「おまえ…、可愛いな…。よし、帰る時間まで俺と遊ぶか」 「うんっ!銀ちゃんと遊ぶっ」 銀ちゃんは上を向いて「はあ…やべ…」と大きく息を吐くと、僕を見て優しく笑い、頭にぽんと手を置いて撫でてくれた。
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