旅する本

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中学生くらいかしら。さほど興味もなかったので、しばらく車窓をながめていると、いつの間にか、その少年は居なくなっていて、座席には先ほどまで読み耽っていた文庫本が置いてあった。 あれほど熱心に読んでいたのに忘れていったのかしら? こんなの、忘れ物として届けるまでもないかな。 そう思いつつも、女は気になり、手にとってページを開く。 その1ページ目にはこう書いてあった。 「これは、あなたの本です。さあ、記念すべき1ページを書きましょう。」 なんだ、自分の本じゃない。騙されたわ。 女は自分の降りる駅に近づいたので、そのままその本をバッグにしまった。
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