第1問 幼なじみには何が足りないのか

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side しずく 「いってきまーす」 私は、緑谷しずく。高1。毎朝学校がある日は同じ時間に家を出る。 なぜなら… 「あっ!おはよー!こう」 「ウッス!」 隣に住む幼なじみ、柴崎こうと一緒に学校へ行きたいから。 私はピアノを小さい頃からやっていて、高校はピアノ推薦で受けた女子校なのだ。 本当は、こうと同じ高校に行きたかった。 でも、将来の夢の為に私は今の高校を選んだ。 入学して1カ月。 こうもバスケで忙しく、こうして会えるのは朝の登校くらい。 最近、ますます背が伸びて、カッコよくなったこう。 私の気持ちも知らないで、 「お前楽しいこと好きだもんな」 「好きだけど、私はこうしか見てないんだし。」 ハッ。 私ってば、何言って…。 「何て?聞こえなかった。もう一回言って?」 良かった。 聞こえてない。 「あっ、降りなきゃ。じゃね、こう」 内心、なんで聞こえてないんだよーって気持ちと、聞こえてなくて良かったって気持ちが半々。 私達は、小さい頃から一緒で仲良しな幼なじみ。それだけ。 本当は、好きな気持ちを伝えたい。 でも、こうと気まずくなりたくなくて、気持ちを隠してる。 「しずくー。行こー。今日は君を連れてくって約束しちゃったの」 友達の結城さえが、泣きそうな声で懇願してきた。 「なんで、私?本当に無理」 「しずく、人気なんだよ?うちの学校でもトップクラスのビジュアルに性格も良いんだもん。ね!今日だけ!お願い!」 仕方なく私は、今日こうして他校の男子高校生とお茶する羽目になり、今どうしようもなく逃げ出したい衝動にかられている。 なぜなら、隣に距離が近いバカな男がいるからだ。 「しずくちゃん、ずっと話したいと思ってたんだよ?」 「あの、私やっぱり…帰ります」 「えっ?やだっ、しずくー?」 私は、店を出て無我夢中で走った。 走った結果、 目の前には、こうと見知らぬ女の子が歩いている。 そんな場面なんて見たくなかった。 楽しそうに何を話してるの? 同じ学校の制服が眩しい。 あっ、その笑顔は! 他の子に見せちゃダメ! 案の定、見知らぬ女の子は、笑顔にやられて、固まり、走り去って行った。 こうの笑顔は、兵器なのだ。 滅多に笑わないこう。 笑顔になるのは、家族の前。親友の前。私の前。バスケの事だけだと思ってたのに。 あの子にも見せていたなんて。 私は暫く、その場から動けずにいた。
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