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「あ」
二月のバレンタイン直前の祝日、レントくんの家へ行く途中に近くの公園の前で、タクくんに会った。
「真帆ちゃん、久しぶり」
タクくんは家から自販機に来ただけみたいで、コートも来ていなかった。
グレーのセーターにチノパンのラフな格好だけれど、いつ見てもキラキラとした空気をまとっている。
「レントのところに行くの?」
「しー」
タクくんが笑顔で聞いてきたので、私は人差し指を口の前に立てて、秘密だというジェスチャーをした。
タクくんがキョトンとした表情をする。
「レントくんは今、家にいないから」
「うん?」
「だから内緒で来たの。私が来たことレントくんに内緒にしてほしいの」
私がお願いすると、タクくんは笑いながら首を傾げた。
「いいけど。レントいないんだよね? 家に入れるの?」
「私、今日はレントくんのお母さんに会いに来たの」
「おばさんに? なんで?」
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