唐突に

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あたしがふつうに聞くと、ナオキは目を剥き、ジェームスは声を荒げる。 「イリジアはそんな女ではない!」 「奥さん、イリジアさん、っていうの?」 「妻ではない、酒場の女だ」 「何の話?」 「イリジアには恋人がいて、わたしを殺したのはそいつだった」 「イリジアさんが殺してくれと依頼を!?」 ナオキはサスペンスが好き。 「黙れ小僧!」 そんなナオキをジェームスは大嫌い、と。 ーーパシャッ 「ジェームスに怒られた瞬間のナオキ」 「何を撮っとる!!」 「何でジェームスが怒るんだよ? 撮られたのは俺……」 「わたしは美しいものしか撮らん! 削除してくれるわぁ!」 「ちょっとジェームス?」 「削除できるの? すげぇ!」 「わたしを誰だと思っておる」 「カメラ」 「……」 ーーパシャッ 「また何を……!」 「雪景色だよぉ。さっきの写真が消せてるか、現像して確かめなきゃ」 歩きだすあたしにナオキは賛同して付いて来る。 「ロッジでミカン食べよ?」 「焼いて食べよう」 「ミカンを? 焼いて食べるのか?!」 ーーパシャッ 「え? ジェームス何撮ったの?」 「現像したら判る」 そして、現像したフィルムの終わりの3コマは、真っ黒な1コマと、雪景色と、長い金串にミカンを5つ刺して、暖炉の火にかざして焼いている丸顔の女の人を写した光景だった。 「え、この人、イリジアさん?」 「し、知らんわ!」 ジェームスは多分、顔を赤らめている。 (おわり)
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