第1章:最強の異剣士を目指して

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今から6年前、世界は統一された。 《剣王》ヴァリアントによって。 ヴァリアントは科学の発達したこの時代に、剣という古めかしい武器をもって立ち上がり、そして世界を制したのだった。 ヴァリアントが用いたのはただの剣ではなかった。 『異剣』と呼ばれる、聖剣や魔剣の類のもの。それらは伝説や神話に謳われる力をそのものをもって地上を蹂躙した。 同時期に起きた史上最大の天変地異ーーー『大陸接続』による大混乱もヴァリアントの世界統一を助けた大きな要因になるだろう。 異剣の力は凄まじく、所有者の肉体は銃弾を弾く鋼と化し、その刃は容易く鉄を断ち切るほどだった。 そういった異剣を扱う者は異剣士と呼ばれ、ヴァリアントの麾下で大いに力を振るった。 異剣士に勝てるのは異剣士だけーーーー、あらゆる科学が異剣士の前に敗北し、世界はそういう風に彼らを捉える。すでに世界に散らばる異剣のほぼ全てを手中に収めていたヴァリアントにとり、世界統一は易かったと言えよう。 しかし、そんな異剣士たちにも勝てない力があった。その代表格となるのが、前時代の遺物、星を汚染する悪意…核兵器であった。 異剣士にとって敵になるのは異剣士だけ…そんなルールを真っ向から壊す事ができるのは、もはや核兵器くらいのものだった。 しかし、そんな核兵器を大量に擁する国家ですらヴァリアントの前に屈した。 他ならぬ核兵器によって。 人類は、人型有人兵器を完成させていた。アームズドール…ADと呼ばれるそれはしかし、無人制御も可能にしていた。 無人制御ーーーすなわち、プログラムによる制御である。 核抑止論をご存知だろうか? こうすれば核兵器の使用を抑止できる、論を語ったものだ。そこには3つのルールが記載されてある。 1つ、核を持つこと。 2つ、自分からは核を撃たないこと。 3つ、核を撃たれたら絶対に撃ち返すこと。 この抑止論があったからこそ、人類は未だ滅びずにいられる、と考える者も多数いる。 しかし、本当に可能なのだろうか? 核を撃たれたら絶対に撃ち返す、なんていうのは。 核を撃たれたら撃ち返す、というのは核戦争の始まりを意味する。核戦争ーーーつまり世界の終わりだ。 人間にそんな判断が下せるのか? 死なば諸共、ただし地球も含めて…なんて冗談じゃない。 人間に世界を終わらせるスイッチを押す事はできない。
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