第二章 距離

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でも、こんな些細なやりとりが楽しくて、つい声を出して笑ってしまった。 それに驚いたのか、大きく目を見開いた奏だったが、ふっと小さく噴き出してクスクスと笑った。 そこに、前に見たような儚さが垣間見えなかったことに、心の中で安堵する。 もっと、この笑顔が見たい。もっと声を出して、楽しそうに笑ってほしい。 会ったばかりなのに、どうしてそんなことを思うのだろう。 私はこの時、すごく喜んでくれたとばかりと思っていたが、本当はとても複雑な気持ちになっていたのだと、後に知ることになる。 「奏くんは、何歳なの?」 「二十三」 「やっぱり、私の方がお姉さんだ」
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