さびしさ対策 #2

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さびしさ対策 #2

「ああ、まあだいぶ……まだ完全じゃないけど」 先月からお店の一部を改装して、店内を広げて奥に小さなカウンターを作るのだと聞いている。『角打ち』を始めるのだそうだ。角打ちというのは、お店の中で、そこの商品を飲める立ち飲みのようなスペースなのだという。それを提案したのは涼ちゃんで、おじさんは最後まで反対していたのだという。最近ではおじさんの代わりに商工会に出席したり、配達以外に営業の仕事も増えていて、これ以上涼ちゃんに負担がかかってしまうことを懸念していたのだろう。 『それをやったからって、すぐに売り上げが増えるって訳じゃねえだろうって親父は言うんだけど、俺は売り上げを増やすことばかりが目的じゃなくて、そういうスペースがあれば、親父が今みたいに完全隠居状態にはなんねえかなって……』 涼ちゃんはそんなことを言っていた。お互いの事を思い合っているのに、なんだかしっくりこない親子だなあって思う。でも、その間を取り持ってくれたのが恵奈さんで、そのスペースを切り盛りする役も買って出てくれたのだという。それなら、と、おじさんも渋々了解してくれて、涼ちゃんは早速配達要員のバイトをひとり雇って、自分は営業に力を入れるようになっていった。短髪とポロシャツの理由は、それだ。  店の前まで来ると、ちょうどバイト君がスクーターに乗って出かけるところだった。 「気を付けろよ」 「うぃーっす」 高校を早々に中退して、宙ぶらりん状態だった彼は、涼ちゃんの友達の弟なのだという。 「あ、そうだ。若社長、さっき電話ありました」
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