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「考えてること、教えてくれないんですよ。あの人、私に何も求めて来ないですし。」
ミキは納得しないアリスに向かって、店の前で「He said " Do you wanna make love ? " OK !? 」と大声をあげる羽目になり、予定をキャンセルして半ば強引に自分の車に乗せ、困惑気味にアリスをなだめようと必死だった。
「そりゃあ、翌日いきなり家で倒れてた人に言われたくないと思うよ、あいつも。ブレーカー落としちゃったのは災難だったけど、熱中症だって死ぬからね。ゲーム一つとっても無意識に頭の中でソース解析始めて動けなくなっちゃうし、食事の管理だって誰かがやってくれる訳じゃない。見るのとやるのじゃ大違いでしょ?
優先されるべき自分の世話がままならないうちに、あーだこーだ言ったってしょうがないなんて、俺だって思うよ。あいつだって、あっちゃんが自分のペースをつかむまでは何も言えないだけかも知れないし。」
「……体を重ねていられた瞬間は、彼だけを感じていられる、とても素敵な時間だったの。」
「あっちゃん、それ公言しちゃダメだよ。良いことだけどね。」
「でも、それっきりよ。そういうものなの?」
「……ぶっちゃけ、今は時期が悪いと思うよ。大切に考えれば、俺でも考えちゃう位。」
「キスだって挨拶程度にしかしてくれないのよ?凄く優しくて、泣きたくなるくらい幸せだったのに。」
「そんな事、俺に言われても……あっちゃんからすればいいじゃん。」
「寝なさいって怒るんだもの。」
「まぁ、そう来るわな。」
「私……何もわからないわ。今日だって本当はどこで何をしているかなんて、全然わからないし。」
「大学が休みの間はあいつにとっては稼ぎ時だし、結構、忙しくしてるよ。そんなに言うなら行ってみようか?」
ミキはルカの職場に向かった。
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