湖底に燈《とも》る仄《ほの》かな灯《あか》り

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ある年の夏に記録的な猛暑が続き,まったく雨が降らず全国的に水不足に襲われた。草木ダムの貯水率も大幅に低下し,日に日に水位が下がり,かつてダムに沈んだ村が姿を現した。 ほとんどの建物は木造建築だったこともあり,大きな柱を残してその姿はなくなっていたが神社の石段や古い石造りの壁や橋はその姿を変えることなくそのままの姿を残していた。 不思議なことに,草木駅は木造建築にもかかわらず,その姿を変えることなくダムの底から現れ多くの元住民たちを驚かせた。 多くの若者にとっては見たことのない光景だったが,かつてこの地域に住んでいた者たちにとっては懐かしく,自分たちが生まれ育った場所が再び太陽の日差しを浴びることに不思議な喜びを感じた。
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