1646人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
プロローグ
大好きな彼が目の前に立っている。
口元が微かに動いて、私に向かって何かを訴える。でも、よく聞き取れない。
もう1回言って。
そうお願いしようにも上手く声が出せなかった。
どうすればいいか分からずにもどかしさを感じていると、彼は突然私に背を向けて歩き始めた。名前を呼ぼうにも、喉元まで出かかった声は音になって届くことはない。
慌てて彼を追いかけた。走って、走って、ただがむしゃらに息が切れるほど走った。
しかし歩いているはずの彼の背中はどんどん遠ざかっていく。どれだけ全力で追いかけても、決して追いつくことはない。
待って。お願い、待って。
やっと声が出せたと思ったのに、その瞬間、遠くに見えていたはずの彼の後ろ姿がパッと消えた。
そしてゲームオーバーを告げるように、一瞬で目の前が真っ暗になる。
最初のコメントを投稿しよう!