序章

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 羽さえ無ければ見た目は人間と変わらない姿をしているせいか、初めて勇者がこの姿を見た時は驚いていた。  勇者というのはどうやら純粋培養された人間の事を言うらしい。  小屋の戸はいつまで経っても開く気配はなかった。  仕方なく勝手に戸を開けて中に入ると、小屋の床の上で薄汚れた布を体に掛けて丸くなっている勇者を見つけた。  勇者の元まで近付くと膝を付いて口元に手をかざす。  息はしているようだが、荒い。  人間の体の事は良くは知らないが、首に触れてみると少し熱く感じた。  薄汚い布を指先で剥ぐと見知らぬ傷痕が胸から腹にかけてついていた。  この傷のせいで熱を出しているようだ。 「放っておけば死ぬか」  最早、虫の息。  この間、勇者と戯れた時は擦り傷は与えたものの体力の限界まで振り回したあと、城の外に捨てやった。    私の玩具である勇者に手を出すバカ者などいないと思っていたが、どうやらそのバカ者がいたらしい。    見つけ出して罰を与えなければならない。 「このくらいの傷で死にかけるとは……」  溜息混じりに呟くと、勇者がその声にぴくりと反応した。  傷を治してやろうと傷口に触れようとした瞬間、手の中に握りしめていた懐刀が私の首に触れた。
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