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「まーなっ…」
和希は葵から目をそらし、カウンターに向き直った。
葵がどんなリアクションをするのか、急に怖くなった。
「…そうだったんだね」
静かにイスが音を立てて、葵は立ち上がる。
「陣くんは、蒼麻さんのこと信じてたんだね」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
(信じて…た?)
あの時、父親の傷口から絶え間無く流れ出る血を眺めながら、それでも助けを待った。
兄は来ると、助けに来ると、父親に言い続けながら。
「…大好きだったんでしょう?」
葵が歩み寄り肩に手を添えてきた。
「なっ、バカじゃね?んな、わけねーだろ!」
葵の手を振り払い和希は吐き捨てた。
「気色ワリィこと言うなっ」
和希は顔を赤らめる。
思い切り不意をつかれた。
本当に葵といると調子が狂う。
だけど接すれば接するほど、彼が惹かれる理由は納得してしまうことに和希は戸惑った。
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