痛すぎる自覚-2

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 黙っていると、央寺くんは、 「まぁ、いいや。それは置いといて」  とあっさり話を終わらせた。 「でさ、さっき姫野が倒れた時言ってたこと。なんで怒ってくれないのってやつ」 「あ……」 「べつに目立ったミスもないし、お客さんへの対応もちゃんとマニュアルどおりにできてたよ」  央寺くんは、淡々と続ける。 「…………」 「けど、上の空ぎみで、声も若干小さく戻ってたよね。お客さんの目を見て話していないこともあったし。お客さんの何人か、不機嫌そうに帰っていってた」 「……うん」  やっぱり、私、ダメだったな、という思い。そして、それ以上に、怒られるのもこれが最後だと思うと、胸にじわりと苦い痛みが広がる。 「体調が悪かったから仕方ないとはいえ、バイト服着て立っている以上、お客さんにとっては店員は店員だし、店の顔。自分で自分の調子の悪さはわかるはずだから、ちゃんとバイト仲間とか店長にそれを言うこと。無理しないこと」 「…………」 「わかった?」  さっきよりも優しくなった声で、央寺くんがそう言った。
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