痛すぎる自覚-2

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「ねぇ、姫野」  ギッと、また椅子が鳴った。ソファー側に顔があるから見えないけれど、央寺くんが身を乗りだして私を覗きこんでいるのがわかる。央寺くんの視線をすぐそばに感じる。 「姫野」  再度呼ばれた名前は、とても真剣な声色だった。その声の近さに、毛布の端をきゅっと握ったまま目を力強くつむる。さっきとは違う胸の痛みが私の心拍を速くさせ、私はその苦しさに下唇を噛んだ。 「……怒ってない」  平静なんて装えなくて、どんな顔をしたらいいのかわからない。  そっとめくられた毛布。私は顔を隠すものがなくなって、丸まった格好のままやっとの思いで小さくそう答えた。  これでもかというくらい赤くなってしまった私の頬を見ながら、央寺くんは、 「顔色、戻ったね」  と、少し意地悪な顔で微笑んだ
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