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もうそろそろいいだろうか。
隙間のあいたドアを横にカラカラと開けて、私は、
「あ……あのー……」
とふたりに声をかけた。
頼子は驚いた顔でこちらを向き、
「か、和奈……」
と言った。
殿村くんはまるで動じずに、
「あれ? 和奈ちゃん、どうしたの?」
と微笑んでいる。
「今、体育館に行ったら、殿村くんがいないって先生が怒ってて……。もしかしたらいるかな、って……呼びに来たんだけど」
「あっ、そうか。今日、合同練習の日だね。サボっちゃいけない日だ」
「……ていうか、毎日サボっちゃダメでしょ」
頼子が殿村くんの腕を小突くと、殿村くんは、
「見に来る? 好きな子にはかっこいいところを見せたいんだけど」
と笑った。
頼子は、ふん、と鼻を鳴らし、
「そんなことより、和奈の彼氏にちゃんと挨拶しに行くわ。下手なことをしたり泣かせたりしたら許さないって、釘を刺しておかなきゃ」
と襟を正した。
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